企業サイトリニューアルの要件定義|制作会社へ依頼する前に整理したい9項目
企業サイトのリニューアルで整理すべき9つの要件と、依頼から公開までの進め方、失敗を防ぐ確認ポイントを解説します。
企業サイトをリニューアルするとき、最初にデザイン案や参考サイトを集める企業は少なくありません。しかし、見た目だけを先に決めると、「誰に何を伝えるサイトなのか」「どの情報を残すのか」「公開後に誰が更新するのか」が曖昧なまま制作が進みます。
その結果、公開後に必要なページが足りない、更新作業ができない、旧URLからの移行で検索流入を落とす、追加費用が増えるといった問題が起こりやすくなります。これを防ぐために必要なのが、制作前の要件定義です。
この記事では、企業サイトリニューアルで整理したい9つの要件、制作会社へ依頼してから公開するまでの進め方、失敗しやすいポイントを実務的に解説します。
結論:要件定義は「完成イメージ」ではなく「判断基準」を決める作業
要件定義の目的は、デザインを細部まで決めることではありません。次の判断基準を、発注側と制作側で共有することです。
- 何を達成したいか:問い合わせ、採用応募、資料請求、信頼性向上など
- 誰に何を伝えるか:顧客、求職者、取引先、金融機関など
- 何を作るか:ページ、機能、コンテンツ、管理画面
- 何を引き継ぐか:既存URL、検索評価、計測設定、公開データ
- 誰が運用するか:更新担当、承認者、保守担当
- どこまでできれば完成か:検収条件、対応端末、テスト範囲
すべてを発注前に確定する必要はありません。ただし、「決定済み」「制作会社と相談して決める」「今回は対象外」を分けておくと、提案と見積もりの比較がしやすくなります。

企業サイトリニューアルで整理したい9つの要件
1. リニューアルの目的と評価指標
「古く見えるから」「競合他社が新しくしたから」だけでは、制作中の判断基準になりません。現在困っていることと、リニューアル後に変えたい状態を分けて整理します。
目的の例には、問い合わせの増加、採用応募者への情報提供、サービス内容の理解促進、営業資料としての活用、社内更新の効率化などがあります。目的ごとに、問い合わせ数、資料請求数、採用ページの閲覧数、更新にかかる時間など、公開後に確認する指標を決めます。
検索順位や問い合わせ数は競合状況、サービス内容、広告、営業活動などにも左右されます。Webサイトだけで成果を保証するのではなく、どの指標を継続的に観測するかを決めることが重要です。
2. 対象ユーザーとサイト内で取ってほしい行動
企業サイトには、見込み顧客、既存顧客、求職者、取引先、金融機関など、目的の異なる人が訪れます。全員に同じ情報を同じ順番で見せようとすると、伝えたい内容がぼやけます。
対象ユーザーごとに、「どのような状況で訪れるか」「最初に何を確認したいか」「最終的にどの行動へ進んでほしいか」を整理します。問い合わせ、電話、資料請求、採用応募、店舗訪問など、重要な行動までの導線をページ構成へ反映します。
3. 既存コンテンツの棚卸しと移行方針
現在のページ、PDF、画像、お知らせ、ブログ記事、採用情報を一覧にし、次の4区分に分けます。
- 内容をそのまま移行する
- 情報を更新して移行する
- 他のページへ統合する
- 公開を終了する
会社情報、実績、スタッフ情報、料金、写真などは、誰が原稿を作成し、誰が確認するかも決めます。制作会社が文章や写真を用意する場合でも、事実確認と公開承認は社内担当者が必要です。
棚卸し表には、現在のURL、ページ名、閲覧状況、移行区分、新URL、原稿担当、確認担当を入れておくと、移行漏れを防ぎやすくなります。
4. サイト構成とURL設計
会社案内、事業内容、サービス、実績、採用、お知らせ、問い合わせなど、必要な情報をグループ化してサイトマップを作ります。ユーザーが目的の情報へ移動しやすいことに加え、社内で新しいページを追加しやすい構造にすることも重要です。
既存ページのURLを変更する場合は、旧URLと対応する新URLの一覧を作成します。Googleは、URLを変更するサイト移転では、旧URLと新URLの対応付け、恒久的なリダイレクト、内部リンクやサイトマップの更新、移転後の監視を推奨しています(Google Search Central「サイトの移転と変更」)。
すべての旧ページを新しいトップページへ転送するのではなく、内容が対応するページへ個別に転送します。引き継ぐページがない場合は、無関係なページへ転送せず、削除方針を決めます。
5. 必要な機能とCMSの更新範囲
問い合わせフォーム、お知らせ、実績、採用情報、資料ダウンロード、検索、会員機能、外部システム連携など、必要な機能を洗い出します。そのうえで、公開時に必須の機能と、将来追加できればよい機能を分けます。
WordPressなどのCMSを導入する場合は、「更新できること」だけでなく、誰が何を更新するかを決めます。更新頻度の高い情報だけを管理画面化し、固定情報は制作会社へ依頼するなど、実際の体制に合わせる方が運用しやすい場合もあります。
フォームでは、入力項目、必須条件、自動返信、通知先、確認画面、迷惑送信対策、送信データの保存有無を決めます。個人情報を取得する場合は、利用目的や保管方法も社内ルールと合わせて確認します。
6. デザイン・ブランド・アクセシビリティ
デザイン要件では、「信頼感のあるサイト」のような抽象表現だけでなく、利用するロゴ、ブランドカラー、写真の方針、避けたい表現、参考サイトのどこを評価しているかを共有します。
同時に、スマートフォンでの読みやすさ、文字サイズ、色のコントラスト、キーボード操作、画像の代替テキスト、フォームのエラー表示なども確認します。W3CのWeb Content Accessibility Guidelines(WCAG)2.2は、Webコンテンツをより多くの利用者が使えるようにするための国際的な指針です。
どの適合レベルを目指すかは、対象ユーザー、公共性、予算、既存システムとの制約を踏まえて決めます。「アクセシビリティに配慮する」という表現だけで終わらせず、検証する項目を要件にします。
7. SEO・表示速度・計測設定
SEO要件には、ページごとの検索意図、タイトル、見出し、説明文、内部リンク、構造化データ、インデックス制御を含めます。既存サイトで検索流入があるページは、安易に削除せず、アクセス状況と検索語を確認して移行方針を決めます。
表示速度については、画像サイズ、動画、Webフォント、外部ツール、アニメーションが影響します。GoogleのCore Web Vitalsでは、読み込みを測るLCP、操作への応答を測るINP、表示の安定性を測るCLSが示されています(Google Search Central「Core Web Vitals」)。数値だけを目的にせず、実際のスマートフォンと回線でも確認します。
Google Analytics、Search Console、広告タグなどを利用している場合は、現在の設定を棚卸しし、新サイトへ引き継ぐ対象を決めます。問い合わせ送信や電話ボタンなど、成果として計測する操作も事前に定義します。
8. 公開後の更新・保守・セキュリティ
公開後に、誰が、どの頻度で、どの情報を更新するかを決めます。更新担当者だけでなく、内容を承認する人、退職・異動時にアカウントを管理する人、障害時の連絡先も必要です。
保守範囲には、CMSやプラグインの更新、バックアップ、稼働確認、フォーム送信確認、ドメイン・SSL証明書の管理、軽微な修正、障害対応を含めるか確認します。「保守あり」という言葉だけでは範囲が分からないため、作業内容、頻度、受付時間、追加費用が発生する条件を明文化します。
9. 予算・スケジュール・成果物・検収条件
予算では、初期制作費だけでなく、撮影、原稿作成、有料素材、サーバー、ドメイン、CMS、外部サービス、公開後の保守費用を分けて確認します。複数社の見積もりは総額だけでなく、ページ数、テンプレート数、原稿や画像の担当、修正回数、テスト範囲をそろえて比較します。
スケジュールには、社内確認と素材準備の期間を含めます。制作作業が完了していても、原稿や写真の承認が遅れると公開日は延びます。担当者、確認期限、最終決裁者を決めておきます。
検収条件には、対象ブラウザと端末、フォーム送信、リンク、表示崩れ、CMS操作、計測タグ、リダイレクトなど、公開前に確認する項目を記載します。デザインデータ、ソースコード、操作マニュアル、アカウント情報など、納品物も確認します。
要件定義で作成しておきたい確認表
| 項目 | 確認する内容 | 成果物・記録 |
|---|---|---|
| 目的 | 解決したい課題と評価指標 | 目的・KPI一覧 |
| 対象ユーザー | 訪問者、知りたい情報、取ってほしい行動 | ユーザー・導線整理表 |
| コンテンツ | 継続、更新、統合、終了する情報 | コンテンツ棚卸し表 |
| 構成・URL | ページ階層、ナビゲーション、旧新URL | サイトマップ・URL対応表 |
| 機能・CMS | フォーム、更新機能、外部連携 | 機能要件一覧 |
| デザイン | ブランド、写真、端末、アクセシビリティ | デザイン要件・検証項目 |
| SEO・計測 | 検索流入、リダイレクト、表示速度、タグ | SEO移行・計測一覧 |
| 運用・保守 | 更新者、権限、バックアップ、障害対応 | 運用分担表 |
| 契約条件 | 予算、期限、納品物、検収、修正範囲 | 見積条件・検収表 |
この確認表の項目が未決定でも問題ありません。空欄を残すのではなく、「制作会社から提案を受けて決める」と記載すれば、相談が必要な範囲が明確になります。
リニューアルを進める7つのステップ
ステップ1:現状の課題とデータを確認する
社内へのヒアリングだけでなく、アクセス解析、検索流入、問い合わせ内容、更新作業、営業や採用での使われ方を確認します。
ステップ2:目的と優先順位を決める
公開時に必須の目的と、将来改善する項目を分けます。目的が複数ある場合は、最も重要なユーザーと行動を決めます。
ステップ3:コンテンツとURLを棚卸しする
現在のページとファイルを一覧化し、移行方針、新URL、担当者を決めます。検索流入や外部リンクがあるページを把握します。
ステップ4:要件と見積条件をそろえる
ページ、機能、CMS、撮影、原稿、SEO移行、保守、納品物を整理します。複数社へ依頼する場合は、同じ条件を伝えます。
ステップ5:設計・制作・社内確認を進める
サイトマップ、ワイヤーフレーム、デザイン、実装の順に確認します。後工程で構成を戻すほど修正範囲が広がるため、各段階の承認者を決めます。
ステップ6:公開前テストと移行確認を行う
端末表示、リンク、フォーム、CMS、計測、リダイレクト、インデックス設定を確認します。開発中に設定したnoindexなどが公開後も残っていないかも確認します。
ステップ7:公開後の計測と改善を続ける
公開は完了ではなく、運用開始です。問い合わせ、検索流入、離脱、更新作業を確認し、優先順位を付けて改善します。

企業サイトリニューアルで起こりやすい5つの失敗
1. デザインの好みだけで判断する
発注担当者の好みと、対象ユーザーに必要な分かりやすさは一致するとは限りません。目的と行動導線を基準に判断します。
2. 原稿と写真の担当を決めていない
制作会社へ依頼する範囲と、社内で用意する範囲が曖昧だと、スケジュールと見積もりが変わります。素材ごとに担当者と期限を決めます。
3. 旧URLの処理を公開直前に考える
URL対応表とリダイレクトは、サイト構成を決める段階で整理します。公開直前では、移行漏れや無関係な転送が起こりやすくなります。
4. 更新できる範囲を増やしすぎる
すべてを管理画面から編集できるようにすると、開発費と操作項目が増える場合があります。実際に社内で更新する情報へ絞ります。
5. 公開後の担当と予算を決めていない
保守、コンテンツ更新、アクセス解析、改善を担当する人がいなければ、情報が古くなります。年間の運用作業と予算も制作時に整理します。
Nobishiro合同会社がリニューアル前の整理から支援できること
Nobishiro合同会社では、誰に何を伝え、どの行動につなげるかを整理し、目的と運用に合わせてWebサイトを設計・制作します。
- 企業サイト、ランディングページ、サービスサイト、ECサイトの設計・制作
- ターゲット、訴求内容、問い合わせまでの導線整理
- 企業情報、事業内容、実績、採用情報などの構成整理
- WordPressのオリジナルテーマやカスタム投稿を使った更新機能
- Shopify、MakeShop、WooCommerce、EC-CUBEなどを含むECサイトの構築方法の検討
- 公開後のテキスト修正、画像差し替え、表示調整、ページ追加などの保守・改善
対応内容の詳細は「Webサイト制作」をご覧ください。
要件が固まっていない段階からご相談ください
「現在のサイトの何を残すべきか分からない」「社内で原稿を準備できるか判断できない」「制作会社の見積もりを比較できない」といった段階でも、決定済みの項目と相談が必要な項目を分けることから始められます。
企業サイト、サービスサイト、採用サイトなどのリニューアルをご検討の場合は、お問い合わせフォームからご相談ください。